はじめに

 内科診療は肺炎などの急性期疾患から慢性疾患である糖尿病,高血圧,高齢者に多くみられる脳梗塞、さらに胃がんや大腸がんなどの悪性疾患など、対象とする疾患は多岐にわたります。その中でも,当科は食道・胃・十二指腸・大腸疾患,肝・胆道系・膵臓疾患などといった,消化器疾患を中心に診療にあたっております。

 もちろん,病院に来られる患者さまはこれら消化器疾患の方だけではありませんので,地域医療の一端を担う病院として、慢性疾患である糖尿病などの内分泌代謝疾患、肺炎等の感染症,高血圧や狭心症・心不全などの循環器疾患などに対しても,幅広く診療にあたっております。

 なお、入院患者さまにおける診療統計では、2016年度の入院患者のうち消化器疾患(54。8%)が最も多く、次いで肺炎などの呼吸器疾患(18。7%)、糖尿病などの内分泌代謝疾患(6。4%)の順でありました。

診療方針

  1. 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患においては、常にガイドラインに沿った標準的治療を心がけております。さらに薬による治療だけでなく、個別に栄養士による栄養指導も交え、多面的な診療を心がけております。
  2. 初期診療から必要に応じて積極的にレントゲンやCT・内視鏡などの画像検査を行い、早期の診断・治療を心がけております(絶食が必要な検査もございますので、当日緊急で検査ができない場合もあります)。
  3. 外科と連携して消化器病センターを開設し、上部・下部消化器疾患ならびに肝胆膵疾患に対して総合的な診療を心がけております。
  4. 新しい検査機器を導入して消化器専門医が消化器がんの早期発見に努めるとともに、内視鏡・超音波検査下治療など、体の負担の少ない治療法を実施してQuality of life(生活の質)の向上をめざします。
  5. 高齢者の増加に伴い、自力で食事が摂れなくなった方や、脳梗塞などの脳血管障害に起因して嚥下困難が生じた方などが増加しております。これらの方々に対しては少しでも長く住み慣れた自宅で過ごせるよう、“胃瘻”造設を行っております。
  6. 2017年7月からは、内視鏡による胃がん健診を開始しております。

入院診療(入院は必要に応じて随時対応しております)

  1. 上部消化管(食道、胃、十二指腸疾患):
    • 食道・胃・十二指腸出血に対する内視鏡的止血術(胃・十二指腸潰瘍 など)
    • 消化管異物に対する内視鏡的摘出術(薬剤シートの誤嚥、義歯の誤嚥 など)
    • 早期胃がんに対する内視鏡治療(ESD:粘膜下層切開剥離術、EMR:粘膜切除術)
    • 胃ポリープに対する内視鏡治療(ポリープ切除術)
    • 食道・胃静脈瘤に対する内視鏡的硬化療法、結紮術
  2. 下部消化管(大腸疾患):
    • 大腸出血に対する内視鏡的止血術
    • 大腸ポリープに対する内視鏡治療(ポリープ切除術)
  3. 肝疾患:
    1. 肝がんに対するラジオ波焼灼法(RFA)
    2. 肝障害の原因精査のための肝生検
  4. 胆膵疾患:
    • 急性胆管炎、閉塞性黄疸に対する胆道ドレナージ術(内視鏡的、経皮経肝)
    • 総胆管結石に対する内視鏡的結石除去術
    • 胆管がん、膵がんに対する診断(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査:ERCP、超音波内視鏡下の膵生検:EUS-FNA)
    • 悪性胆道狭窄に対する金属ステント留置術
  5. その他
    • 経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)、中心静脈栄養ポート留置
    • 悪性消化管狭窄に対する金属ステント留置術

※:胆膵内視鏡検査・治療内視鏡検査等の特殊検査・処置については、原則的に予約検査としておりますが、上部・下部消化管内視鏡検査は緊急性・状況に応じて毎日施行可能です。胆石や悪性胆道狭窄等による黄疸が疑われた場合は、病態・緊急性に応じて早急な内視鏡的ドレナージを行っております。

2012年9月以降、胆管内に積み上げ結石や10mmを超える比較的大きな結石を認めた場合は、大口径バルーンによる内視鏡的乳頭ラージバルーン拡張術(EPLBD)を行い、処置回数を減らすことに努めております。

外来診療

  • 胃がんの一因となるヘリコバクター・ピロリ感染症の診断と治療(除菌療法)
  • 食道がん、胃がんに対する拡大・画像強調・超音波内視鏡を用いた内視鏡診断
  • 胃瘻(PEG)造設患者におけるカテーテルの安全な交換
  • ウイルス性肝炎(B型肝炎、C型肝炎)に対する抗ウイルス剤治療
  • 肝硬変患者に対する栄養療法と肝不全治療
  • 喫煙に対する禁煙外来(完全予約制。毎週水曜日)

※:ペニシリンアレルギーの方に対する除菌療法や二次除菌を失敗した方に対する三次除菌療法を自費で行っております。

※:糖尿病,高血圧,脂質異常症などの慢性期疾患に対しては常にガイドラインに沿った標準的治療を心がけております。特に糖尿病診療においては,患者さま個々の病態にあわせてきめ細やかな治療を心がけ,糖尿病であることが判明し,治療を開始する患者さまには積極的に教育入院を勧め,スムーズな糖尿病治療導入を心がけております。もちろん通院中のコントロールが不良な糖尿病患者さまにもこの教育入院は効果的であります。

 さらに、地域医療に少しでも貢献すべく地域支援センターを設け,近隣の開業医の先生方からの患者さまの紹介をお受けしております。

他院との連携

 疾患に対する各種治療の多様性、専門性から、当院では治療・対処困難な疾患もございます。例えば、心筋梗塞や狭心症等の循環器疾患、脳出血や脳梗塞等の脳血管疾患は、急性期の治療がその後の予後(治療後の経過あるいはその見通し)を左右します。これらの疾患については、診断がついた時点で近隣の施設(奈良県立医科大学付属病院、西和医療センター、高井病院等)とすみやかに連携をとり、診療をお願いしております。

血管造影検査

 奈良県立医科大学放射線科の協力のもと、肝細胞がんに対する腹部の血管造影検査・肝動脈塞栓療法を行っております。

がん診療

 当院は奈良県より平成22年4月1日付けで「奈良県地域がん診療連携支援病院」の指定を受けており、悪性疾患の患者さまも多く受診されます。我々の姿勢として,基本的にガイドラインに沿った適切な医療を心がけております。同時に患者さまの年齢やご本人のご希望を考慮し,その時点で最適な治療が提供できるよう,積極的に各種研究会や学会・研修会に参加し,日々研鑽を重ねております。

肝疾患に関する医療圏中核専門医療機関としての役割

 当院は、奈良県より、2008年4月1日付けで「肝疾患に関する医療圏中核専門医療機関」の指定を受け,肝疾患に対して専門的な知識を持つ医師(日本肝臓学会認定医師や日本消化器病学会専門医)により診断と治療方針の決定を行っております。

早期胃癌の内視鏡的治療

  • 内視鏡的粘膜下層剥離術:Endoscopic submucosal dissection( ESD)

ESDの手順

 胃癌は日本人が最も多くかかる癌ですが,早期に発見し適切な治療が行われれば,高い確率で治癒させることができます.また,早期胃癌で粘膜層と呼ばれる浅い部分に癌細胞がとどまる場合,一定の条件を満たせば,胃カメラから電気メスを出して癌の部位を「剥がしとる」だけの治療「内視鏡的粘膜下層剥離術,ESD」で治癒が見込めます.従来の開腹術よりも痛みが少なく,短期間の入院で根治が期待できます.

吉川 雅章

 

胃体中部小弯の早期胃癌
胃体中部小弯の早期胃癌
粘膜下層剥離の様子
粘膜下層剥離の様子
   
病変を剥がし終えた後の状態
病変を剥がし終えた後の状態
一括で切除された病変
一括で切除された病変
   

肝機能障害

 肝臓はさまざな原因で炎症が起こり、働きが悪くなります。最初は無症状ですが、進行すると黄疸、腹水、肝性脳症(昏睡)、静脈瘤(破裂)などの肝不全症状が出現します。

 急性で終わる病気と、慢性化して進行する病気があり、慢性の病気から癌ができることがあります.原因により病気の進行度、治療の方法が異なりますので肝臓専門の先生へ相談することが重要です.原因として、肝炎ウイルス、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、自己免疫疾患などがあります.

ウイルス性肝炎:

 日本においては、B型肝炎ウイルス(HBV)或いはC型肝炎ウイルス感染(HCV)による肝炎がその多くを占めております.我が国で行われているHBVに対する感染予防は、HBV持続感染している母親からの出産時の感染予防対策のためのHBV免疫グロブリンとワクチン接種の組あわせによる予防と、医療従事者など希望者に対するワクチン接種による予防、さらに平成28年10月より0歳児に対するB型肝炎ワクチンが定期接種となりました.B型肝炎ウイルスに関しては検査として採血でHBVウイルスマーカー、肝機能検査、さらに肝炎の進展を評価するため肝生検を行います.治療は抗ウイルス薬としてIFN(注射薬)と核酸アナログ製剤(内服薬)の2種類があり、肝炎の進行を予防する目的で肝庇護剤を投与することもあります.当院では現在 症例を治療しています.

 C型慢性肝炎については現在、インターフェロンを使わない飲み薬だけの治療が2014年9月から始まりました.当院ではこれまで 症例を治療しています.現在、95%以上の人でウイルスを体内からなくすことが可能となっています.しかも、インターフェロンのような副作用が少なく、これまでさまざまの合併症でインターフェロンが使えなかった患者さまでも安全に治療ができるようになりました.このようにC型肝炎ウイルスを体内から排除することは容易になりました.

 しかし、体内からウイルスがいなくなっても、これまで悪くなってきた肝臓病そのものが完治したわけでは決してありません.肝臓病そのものの経過観察を引き続きお受けになることが重要です.とくに肝臓病が進行してしまった方は、肝癌合併の危険性がひきつづき残っていると考え、定期的な超音波検査やCT・MRI検査などの画像検査を受けることが重要です.

非アルコール性脂肪性肝疾患:

 最近,注目されている疾患で、患者さまも増えており、当院では現在、 例の患者さまを治療しています.進行すると肝硬変や肝癌になる恐れもあります.原因のほとんどは、生活習慣の乱れやストレス、運動不足などで、メタボリックシンドロームの肝臓の表現形と考えられています.

 治療法としては、食事運動療法による減量が効果的です.最終的には現在の体重を7~10%落とすことを目指して、運動などで活動量を増やし、食事の量・バランスを見直し、そして継続することが重要です.そのためにも、定期的に担当医や保健師、管理栄養士に相談しながら、目標を少しずつ達成していくようにしましょう.

 

内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP) 内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP :endoscopic retrograde cholangiopancreatography)は、内視鏡(カメラ)を口から入れて食道・胃・十二指腸を通り、肝臓・胆嚢や膵臓からでる胆管・膵管に造影剤を流す検査です。エコーやCT、MRIでも診断を行うことはできますが、この検査により診断から、おなかにメスをいれず治療まで行うことができます。

 この検査の対象となる主な病気としては、総胆管結石、胆管癌(胆管にできる癌)・膵癌(すい臓にできる癌)があります。

 胆石は胆汁中の成分が石のように固まってしまったもので、胆嚢内にできる「胆嚢結石」と、総胆管にできる「総胆管結石」の2つに分かれます。

総胆管結石 なかでも総胆管結石は胆嚢結石と比べると腹痛、黄疸、発熱などが強く起こりやすく重症化し時には死にいたることもあります。

 そこで内視鏡での治療を行い、胆石をとり出します。すべての人にこの治療ができるとは限りませんが、開腹手術を行っていたころより格段に体の負担も少なくできます。具体的な条件等については専門医に相談する必要があります。 胆管が癌により狭くなっている場合、胆汁の流れが悪くなり黄疸がでます。これに対する治療として、プラスティックや金属の筒(ステント)を胆管に入れることで胆汁の流れを改善させることができます。特に金属のステントは細菌感染がなければプラスティックのステントに比べ長期間の効果が期待できます。

 またこのような内視鏡的治療の進歩は日々目覚ましいものがあり、今後も患者さまの身体的負担はますます減少するものと思われます。 ERCPは高度な技術を要する検査ですが、当科では常勤医7名全員がERCP施行医となり、年間170件程度のERCPを行っております。

便潜血検査について

 便潜血検査陽性とは、採取した便の検体の中に血液が混じっているということであり、主に大腸での出血を疑います.

 集団検診の報告では、便潜血陽性になるのは1000人中50人程度になります.さらにそのうち2-3%(1-2人)が大腸癌と診断されます.なお、便潜血反応による大腸癌の検出率は、進行癌で60-70%、早期癌で30-40%であり、2日間連続検査法を行うことで10-15%程度検出率が改善するとされています.初期の段階で確実に見つけるには、大腸内視鏡検査による精密検査を行う必要があります.そのほか炎症性の腸疾患や痔核や裂肛などの肛門の病気でも便潜血検査は陽性となります.

 便潜血検査が2検体中1検体でも陽性の場合には、大腸に何らかの病気がある可能性がありますので、すみやかに大腸内視鏡検査による精密検査を受けてください.もう一度便潜血検査を行うことは意味がありません.

 当院では2017年 1月~12月で大腸内視鏡検査592件(全大腸内視鏡検査500件、直腸・S状結腸内視鏡検査92件)を施行しています.初回検査時に内視鏡治療の適応のあるポリープに関しては切除も行っております(病変の大きさや形態によって例外はあります).

 便潜血検査陽性であった場合には受診して大腸内視鏡検査につき相談してください.